令和2年6月16日(火)
本日11時より『オンライン授業について』城戸 教育長に一般質問をしましたので、その質問内容と答弁を掲載します。本会議場登壇席においては感染・飛沫防止フィルム等も設置され、万全な新型コロナ感染対策が行われております。
【片岡/質問内容】
新型コロナウイルス感染症 発生に伴い、福岡県内の小・中・高等学校でも約2か月半という長期間にわたり「臨時休業」が続くことになりました。現在では、地域によって内容に差はあるものの、分散登校や、短縮授業など、徐々に学校再開が進み多くの学校で通常授業に 移行されております。 しかし、今後、第2波、第3波の、波が 押し寄せることは、専門家筋では、当たり前のように 語られています。そこで、再度、児童・生徒たちの「安全性の確保」と「学習保障」の 両面を熟慮しながら「臨時休校」せざる を得ない 状態となる 可能性は、十分考えられることであります。従いまして、教育現場は、より高度な対応が求められるわけであります。国連教育科学文化機関、いわゆる、ユネスコは「一時的な休校が、今回ほどの規模や早さで進むことは、前例がなく、更に 長期化すれば、教育を受ける権利を脅やかしかねない」と警鐘を鳴らしています。 今回の事態を受け、もし事前に「オンライン学習」また「授業」を、実施できる環境が、整っていたのならば、行政や各教育委員会も、より迅速に「休校措置」の判断ができたのではないか と考えます。 我々は、今回のいわば「第一波コロナ騒動」を十分に検証し、新たな事態に万全なる 態勢を 整えなければならない ところです。ところで、昨年末、コロナ発生前ですが、文部科学省は我が国の学校のICT環境が「他国と比べ、非常に遅れており、活用自体も少なく、整備状況の 地域差も大きい」とのことから「GIGAスクール構想」なるものを打ち出しました。この構想は、5ヶ年計画で全国の小中学生に対し1人1台のパソコンを貸与しICT環境を進めていこうというものでありました。その5ヶ年計画 遂行のさなか、今回の新型コロナウイルス感染症による、長期間の休校措置となった為、国は、急遽今年度1年間で、すべての 児童・生徒1人1人に、パソコンを 整備しようと、現在、急ピッチで推進している とのことであります。このように、今まさに 学校自体が、オンライン学習の環境を作ろうとしている 最中であります。
言い換えれば、現時点でオンライン学習をする ことができない ということでもあり、環境整備が整っていない家庭もあることから、双方の環境が整わない限り「オンライン学習」は成り立たない というのが 現状であります。そこで、教育長に何点か質問をして参ります。まず、はじめに、先にも 述べましたが今年度中に福岡県内でも、各市町村の小中学生に対して、1人1台のパソコンが貸与され、オンライン環境が整うもの と思われますが、県立高校はオンライン学習を 実現するために、どのような内容で、いつ頃までに、整備されるのかお答え願います。また、同時双方向型のオンライン指導を実施するためには、ネット環境が 整備されていない家庭に対しては、どのような支援が行われるのか。併せて、市町村立の小中学校における取組状況と、それに対する、県としての支援についてお答えください。次に、報道等によれば4月20日より県立高校の一部でオンライン学習が、試行的にスタートしたと聞いております。そこで、今回のコロナ禍により、休校期間中、小・中学校、及び、県立高校の「オンライン学習」の実施状況は、どのようになっていたのか。そして、オンライン授業を、実施した学校では、どのような教育効果があったのか。一方 どのような 問題・課題が 出てきたのか、お答え願います。次に、小学生、特に、低学年の児童に関する課題についてお聞きします。オンライン学習を、導入するとして、果たして低学年の児童の場合、ひとりで、パソコンを 操作できるのか。長時間集中力が続くのか。保護者がそばに付きサポートすることができるのかなど懸念するところであります。特に、保護者が仕事をしている場合は大変難しい問題でもあります。そこでお尋ねします。小学生、特に、低学年の児童に対して、どのような形で「オンライン学習」を 進めていかれるのか教育長の見解をお聞かせ願います。次に、肝心の教員に「ICT機器を操作するスキルやオンライン学習を行う能力が、十分に育成されているのかどうかが、大きな課題の一つになってきます。
パソコン・ICT整備などハード面の整備を進めれば、オンライン学習がスムーズに展開できるというものではないと考えます。オンライン学習を導入するにあたっては、教員の方々に、ICT機器を操作するスキルが必要になることはもとより、黒板とチョークによる授業とは異なる「力」が求められます。黒板とチョークによる、授業の様子を、撮影して「動画配信する」という方法もありますが、どうしても教員から児童・生徒たちへの、一方的な授業にならざるを得ません。 オンライン授業と言う以上は、通常の授業と同じように、教員と子供たちとの対話や、児童・生徒たち同士の意見交換を 交えつつ、双方向の 授業として、実施する必要があると思います。このため、教員の方々の、オンライン学習を、実施するための教育力と指導力が、今にもまして問われることになります。このような能力は、これまで、あまり意識していないのではないか と思いますし、教員の「ICTスキル」の 差によって、学校間またクラス間で教育内容や、その進捗に 差が生じる 懸念もあります。以上のことからも、オンライン学習の実施にあたっては、この際、市町村の教育委員会に、一任するのではなく、県教育委員会のもと、研修機会を提供したり、指導・助言したり していくことが 必要であると考えますが、その点県教育長としての見解を お尋ねします。さて、最後に、一言 述べておきます。学校における ICT教育は、時代の流れもあり、推進していく べきである と考えます。しかしながら「オンライン授業」は、あくまでも補完的な ものであり、 非常事態時の 学習方法と捉え、本来の形である、学校に 登校して直接授業を受けることが基本であることは『論を待たない』と 思っております。学校には、社会関係や、1対1での「対人関係」また「コミュニケーション能力」を学ぶ場所であり、昼食で栄養のある食事をとれる場所。そして、いじめ・虐待などに 気づく場所 など勉強する 場所 という以外にも 重要な 役割 があります。福岡県の教育においては、どのような状況下においても、児童・生徒が、十二分なる教育を 受けられる環境と整備を構築して頂きますよう要望致しまして私の「一般質問」を終わります。
【教育長/答弁】
県立高校におけるオンライン学習環境の整備と市町村への支援については、 県立高校では、高速大容量の校内通信ネットワークや通信用カメラ、マイク、 遠隔教育用ソフトウェアに加え、再度臨時休業となった場合のことを想定し、 家庭にオンライン学習環境の整っていない生徒に貸与することができるよう、 モバイルルータやLTE通信に対応したタブレット型パソコンを併せて整備 することで、全ての県立高校でオンライン学習が実施できる環境の構築を鋭意 進めているところであります。しかしながら現在、必要な機器が市場で不足しているため、暫定的な対応と して、オンライン学習にも活用できるレンタルスマートフォンを一部配備したところであり、今後速やかに、残りの必要分を配備し、8月以降、全校でオンライン学習をスタートできる体制を整えて参ります。小中学校については、各市町村において国の補助金を活用し、学校のICT 環境整備が進められており、これと併行して、家庭のオンライン学習環境の実態把握と、家庭に貸与可能な機器の配備などについて検討が進められているところであります。今後とも、必要な情報を速やかに提供し、市町村の取組を支援して参ります。オンライン学習の実施状況については、公立小・中学校を所管する市町村教育委員会に対し、臨時休業中に実施した調査では、動画やデジタル教材の活用は9市町、双方向型のオンライン指導を行ったのは、1市であり、この調査後にも、新たにいくつかの市町村が取組を開始 したことを承知しております。県立高校で、ZOOM(ズーム)などのテレビ会議システムを活用した同時双方向での学習活動やホームルーム活動を57校で実施し、YouTube (ユーチューブ)などの動画配信システムを活用したオンデマンドによる授業 動画や自作教材などの配信を71校で行いました。次に、オンライン学習の教育効果と課題については、公立小・中学校においては、ICT機器が先進的に整備されている一部の学校での取組みであり、実施上の成果や課題を十分に把握するまでには至っていない状況であります。 しかしながら、取組みを実施した学校では、教員と児童生徒が顔を見て会話することができたことから、教員としては児童生徒の状況把握、児童生徒としては 安心につながったなどの声があったと聞いております。県立高校においては、質問がその場ですぐにできたことや英語の発音練習が 伸び伸びできたことなどの報告を受けています。一方で、生徒の集中力を持続させるための工夫が求められることや家庭の様子が映像に写ったり音声に入ったりすることなどの課題があり、今後、指導上の 工夫と学習環境に関する留意点の整理が必要であります。 次に、小学校低学年の児童のオンライン学習の充実については、 小学生、特に低学年の児童がオンライン学習に慣れるには一定の期間指導する必要がありますが、県内において、ICTを活用した授業づくりの研究に取り組んだ学校からは、数週間の指導で参加可能であるとの報告がなされています。県教育委員会としては「できるところから始める」「不十分ならばそれを補う支援をする」という考えのもと、学習環境を整備しつつ、教員の指導力を向上させながら、児童生徒の「学びの保障」に取り組むことが重要であると考えております。 最後に、 研修機会の提供及び指導助言については、 再度の臨時休業に対応するために、オンライン学習の実施に向けた準備は、喫緊の課題でありますが、これからのICT機器を活用した教育は、デジタル教科書や教材の活用など、学習指導の在り方の変革を目指しており、環境整備とともに、それらを使いこなす教員の能力を高めていくことが重要であると考えます。今後、県教育委員会としては、各学校におけるICTを活用した授業づくりの実現のため、中核となる教員を育成する研修を充実したり、ICT関連の企業や先進 的な取組みを行っている県に1年間教員を派遣したりして、教員のスキルアッ プを図って参ります。
2020年06月16日 17:13